10周年記念!

Nojirintei The 10th Anniversary

学生の頃、ほとんど毎日のようにおごってもらっていた「おじさん」がいた。

別におかしな関係ではなかったけど(笑)、僕にとっては兄貴のような年齢の彼のマンションで、居候、いや、自宅みたいに寝泊りしていた時期もあった。

夏は久我山の穴場的プールで一緒に日光浴をして、午後、僕はベースを担いでバンドの練習のために大学へ、、彼は吉祥寺にある自分のレコード店へ仕事に出かけた。

夕方、僕はバンドのメンバーと分かれた後、高円寺のバイト先へ。

彼も、レコード屋の営業が終わるとそこに現れる。

毎日、ほぼ同じメンバーが集まる店だった。

フツーの店の振りをした、身内のための店。

夜な夜なそこに集う大人達に混ぜてもらって、僕も朝まで中央線沿線を徘徊したものだった。

当然、その頃はお金なんて食うに困るくらい、全然なかった。

だから、その大人たちにいつもご馳走になっていた。

一番面倒をみてくれたのが、その「野路」というおじさんだった。

当時はおじさんというほどの年ではなかったけど、僕が20歳で出会った時から、風貌は今も変わっていないはず。

もうずいぶん、年賀状だけのやりとりになっていた。

その野路さんからCDが送られてきた。

長年、ミュージックを売ってはいたけど、ミュージシャンではなかったので、ちょっと驚いた。

CDジャケットに写っているのが西荻にある彼のバー『野路凛亭』と彼自身だったからだ。

「Nojirintei The 10th Anniversary」とタイトルされたそのCDには23曲入っていた。

自分好みの楽曲を集めたプライヴェートイッシューを、店の開店10周年記念として友人知人に送ったのだろう。

そっか、あのバーも10年たちましたか?!

突然のプレゼントに唖然としたけど、今、それを聞いている。

そして、なんだか、顔をがほころんできた。

「野路」を彷彿とさせる曲ばかり。


そういえば、音楽で食っていければいいと思っていた学生時代、彼は僕の音楽のグルだった。

彼の部屋のNakamichiとJBLの音響システムで聞く音楽は、いつも特別だった。

たとえば、『アラン・トゥーサン』の「Southern Nights」なんて、その部屋以外のどこで聞こうが決して同じ感動が得られなかったことを、今でも覚えている。

そして、そんな感覚が今、蘇えるようだった。


実は何年も前から「J・POP」に飽き飽きしていて、さりとて、昔の洋モノを聞いても一瞬で覚めてしまい、「YUI」しか聞かなくなってしまったような最近の自分が、妙に可笑しくなった。

非売品なのでクレジットされた曲は書かないけど、すでに僕はそれら「野路の音」で、気の遠くなるほど昔の心地よい記憶を呼び覚まされている。

すっぽり嵌ってしまった。


さて、「ガレ」にでも行って聴きますか。

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